劇場版 聲の形

9/17 14:40 川崎チネチッタ チネ11

前置き

秋の劇場アニメ強化期間のトリを飾る作品。
この後公開の作品もあるけどちょっと間が開く。
この作品はユーフォ劇場版で見た予告の時点で鑑賞決めていたのだが、
土曜は舞台挨拶ライブビューイングがあるということで、水曜に予約を取って公開初日に見ることとした。
ということで客入りは満席である。端とったから気にならんけど。
客層は様々で、学生っぽいのがメインながらもシニア層もいたりといった感じ。

本編について(ネタバレ)

この作品、めっちゃ感想が書きにくい。テーマが沢山あってどれを書いたらよいのかわからなくなる。
君の名は。」「Planetarian」は鑑賞後に快感を残すような作品だと思うが、
この作品はそうではなくて、わかりやすいものではなくもっともやもやした感情が残り続ける。
作品の内容としては、「再生の物語」とでも言えばいいのだろうか。
壊してしまった繋がりを、躓きながらも結ぼうとするあがきを描いた話だ。
過去の罪から逃れられず、自分の行うことを信じきれないけれど
何とか前に進むことを目指して主人公、石田将也はもがき続ける。
それぞれのキャラクターが背負う罪悪感や弱点は誰しも少しは持っているだろう。
それを他人様の視点で「○○って最低だな」「許せない」と否定することは自分にもブーメランが飛んでくるのだ。
自分は壊してしまった関係をそのまま放置してしまう、そしてそんな自分が嫌いだが直さないような人間なので
もがき続ける将也の姿は自分への問いかけにもなった。


この作品ではあえて「伝わらない」表現があって、
難聴であるもう一人の主人公、西宮硝子の話し声はあまり聞き取ることができず
手話も学んだことがない自分には彼女の表現したいことが何なのか、すぐに読み取ることはできない。
受け取る側の解釈次第だ。
それが正しいのか間違っているのか、答え合わせをすることはできない。
(手話については後から調べればわからなくはないが…)
でもそれは相手が硝子であるからというわけではなく、
誰しも少なからず人に見せている部分と本当の気持ちがズレているものなので
わかろうとする意志をもってアプローチすることが大事なのかな。と。(雑なまとめ)


ここからゆるくなるのだ。つーか長いなこの文章。
印象的なキャラクターについて。というか主役以外ほぼすべてだな。
・永束友宏
いつ突き落とされるかわからない緊張が常に付きまとうこの作品の中で、
オアシス的な存在が永束(と石田母)だ。
この2人がいなかったら物語は始まる前に終わっていた…
・植野直花
バイオレンスとエロスで周囲を嵐に巻き込む戦慄の美少女。
両方映画では若干弱まったのと、CVが金子有希だったために隠し切れない優しさが溢れていた。
今まで優しい役ばっかやってるのにこんなピーキーな演技も聴かせられて私は衝撃であり幸せです。
高森藍子さんが汚い言葉で高垣楓さんをフルボッコにしておられる…(結局デレマス脳)
つーか早見沙織のあの演技はどうやったらああなるんだ凄すぎ(ほめ言葉)
・石田母/西宮母
ほぼ無限の優しさで子供を包み込む太陽、石田母と
厳しさで子供を強くしようとする北風、西宮母。
原作の右手ですべてを薙ぎ払う鉄仮面だけど弱さを秘める西宮母結構好きなんですが
ちょっと弱体化されすぎじゃないですか?植野と互角くらいになってましたよ?
石田母は京アニクオリティ&ゆきのさつきボイスで若返りヒロインの一角状態。ドキドキしましたわ。
・西宮結絃
影の主役であり将来が一番心配な姉ちゃん依存症ガール。
4点の答案を見せるシーンは作中唯一笑いが起きていたぞ。
悠木碧の演技が溶け込みすぎている。「僕だけがいない街」はまだわかったけど
この作品では言われないとわからない。
生々しさが付加されて魅力が増した。


オリジナルシーンについて。
・ジェットコースター佐原
味方集めパートがめっちゃ省略された影響もあって影が薄くなった佐原だが
ジェットコースターで落ちながら手を放して上げるシーンは成長を感じさせて印象的だった。でかい。
・葬式の蝶
ばーちゃんの葬式の後、結絃の指には蝶が止まり、その後硝子の指には止まらず飛び去ってしまう。
蝶は変化・生まれ変わりの象徴だったり、仏教であの世をこの世を結ぶ生き物だったりするようだ。
硝子はこの時点でまだ変われていない、ということだろうか。
・硝子の土下座
原作の場合では石田母に筆談で謝ろうとして拒絶されていたところが
直接土下座で謝罪になっている。
相手の土俵に乗りすぎて胸が締め付けられる。
・植野の手話
ラスト、植野が手話で「バカ」と言い硝子が笑いながら言い返すシーン。
植野は面と向かってストレートに殴り合わなければわからんスタイルで
(筆談やメールをできるだけ使わない。佐原は逆パターン)
それは誰に対しても同じなのだが
そんな彼女がちょっと変わったんだな、と思わせるいい改変だと思う。


まとめ。
もともと原作の時点で気になっていた作品なのだが、
若干ハードルが高い気がして手を出せずにいた。あの顔の×演出とか。
鑑賞前日に金曜日の夜にkindleで買って一気に読破してしまった。
今思うとこれは比較に意識が行ってしまうので、順番としてあまりよくなかったかな。
違いとしては、原作7巻を一気に129分に収めたこともあって、
セリフで種明かししていた部分を説明しないでいかに伝えるか、というところが面白かった。
劇場で見るとほぼ刃で心を突き刺すシーンばかりで、すぐにまた見ようと思えないのだが
時間が経ってみるともやもやしたものが残っている。そんな作品。また来週くらいに行けるかな。
あ、あとサントラ買ってしまった。あのアンビエントな感じの神経を澄ましてくれる生っぽいBGMが凄い好きです。